名刺交換が多いのは日本と韓国

【田原】最後に世界展開について聞かせてください。僕がアメリカに行ったときの記憶では、名刺交換はほとんどしなくて、握手で終わりだった。いまもそうですか。

【寺田】西海岸の一部に行くと、あんまりしないですね。紙の名刺交換はクールじゃないという風潮があって、さっきご紹介したリンクトインでつながることが名刺交換の代わりになっています。

【田原】じゃあ、世界市場で期待できるのはアジアですか。

【寺田】名刺交換がとくに多いのは日本と韓国で、ほかのアジアの国でも日常的に行われています。今年シンガポールに支社をつくったので、そこから攻めています。半年で数十社に使っていただいていますから、まずまずといえるんじゃないでしょうか。

【田原】シンガポールでEightは展開しないのですか。

【寺田】まだです。Eightは収益化に手を付けていない状態なので、まずは日本において収益モデルを確立することが先。海外に持っていくのはそれからでしょう。

【田原】最後にもう1つ。アメリカでは名刺交換がクールではないという話でしたが、日本もいずれ名刺文化がなくなるかもしれません。そのとき寺田さんの会社は困りませんか。

【寺田】じつは私たちは紙の名刺をなくしたいのです。名刺ビジネスをしていると、「紙の名刺って手触りがあっていいよね」といったほうが喜ばれることもあります。でも、本当はべつに紙でなくていい。たとえばその場でスマートフォンにタッチして情報を交換し、紙の名刺には書かれない経歴まで瞬時に分かるようになれば、1つひとつの出会いがずっとリッチになるかもしれないじゃないですか。いずれはそうした世界を実現させたいし、それができるのは名刺を電子化するノウハウを世界一持っている私たちではないかと思っています。

【田原】なるほど、わかりました。頑張ってください。

寺田さんから田原さんへの質問

Q. 世界を変えたと思う人は誰ですか?

【田原】世界を変えた日本人といって僕が思い浮かべるのは本田宗一郎さんです、本田さんは社内に失敗賞をつくりました。大きな失敗をした人を表彰するのですが、それは裏返すと、チャレンジしない者は去れということ。そうやって社内に挑戦の風土を根付かせたから、ホンダからイノベーションが生まれたのです。

本田さんは、ホンダが二輪から四輪に進出しようとしたとき、いまある四輪メーカー以外は認めない法律を作ろうとしていた通産省(現・経産省)とケンカして、とうとう法案を撤回させた。監督省庁に盾突くなんて、日本人の発想じゃないでしょう? 世界を変えるエネルギーは、むちゃくちゃなところから生まれるのです。

田原総一朗の遺言:むちゃくちゃな人が世界を変える

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、FREEPLUS社長・須田健太郎氏インタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、10月24日発売の『PRESIDENT11.14号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 

『起業家のように考える。』(プレジデント社)

いま話題のサービスを立ち上げた起業家たちは、何もないところからどのようにキャリアを形成し、今に至ったのか? 18人の起業家にジャーナリスト田原総一朗が鋭く切り込む。