安倍内閣が成長戦略の一つに掲げる、訪日外国人の誘致。2020年の東京オリンピックという大きな山があるものの、円高で訪日観光客が減っているのではないかとも言われる。しかし外国人観光客のニーズを捉え、急成長を続けるインバウンド企業が、大阪の「FREEPLUS」(フリープラス)だ。

社長の須田健太郎氏は、マレーシア生まれでインドネシアと日本育ち。マクドナルドのバイトで商売を学び、堀江貴文氏の影響で起業を決意したという須田氏が目指すのは「世界一を取る」こと。なぜ起業したのか、なぜ旅行業で世界一を目指すのか? 田原総一朗氏と須田健太郎氏の対談、完全版を掲載します。

24カ国、約450社の旅行代理店と取引

【田原】須田さんは訪日観光客向け事業、いわゆるインバウンド事業をやっていらっしゃる。具体的には何を?

【須田】ひとくちに訪日観光産業といっても、さまざまなビジネスがあります。海外の旅行代理店もそうですし、日本のホテルやお土産屋さん、レストランも、インバウンドです。われわれはいずれ全部に参入したいと思っていますが、手始めとして、まずランドオペレーター事業を手がけています。

【田原】ランドオペレーター? それは何をやる事業ですか。

【須田】訪日観光客が日本に来たとき、宿泊や移動手段、レストランなど、日本側で発生する手配を専門にやる事業です。具体的には、まずわれわれが旅行商品をつくります。たとえば「関東3泊4日、東京と箱根、富士山周辺の旅」みたいな旅行企画がありますよね。それを海外の旅行会社に営業して海外の人に販売してもらい、お客様が訪日したら、日本側でのオペレーションはわれわれがやると。

【田原】東京と箱根の旅とおっしゃったけど、須田さんの会社は大阪です。東京に会社があったほうが便利じゃないですか?

【須田】どうでしょうか。本社は大阪で、従業員数約140人中、東京には4人が常駐しているだけです。いま売り上げの95%以上が海外なので、国内のどこで事業をやろうとあまり関係はないと思います。家賃は大阪のほうが安いですし。

【田原】いま何ヵ国の旅行代理店と契約しているのですか。

【須田】24ヵ国、約450社の旅行会社と取引実績があります。手配した人数でいうと、前々期が年間6万人、前期は13万人です。

ランドオペレーターに「強いライバル」が少ない理由

【田原】すごい伸びですね。インバウンドは、やっぱり儲かるんだ。須田さんの会社と同じようにランドオペレーターをやっている会社はどれくらいあるのですか。

【須田】われわれがライバルと認識しているのは200社ぐらいですね。

【田原】そんなにあるわけ? 競争は激しくないのですか?

【須田】業界の構造がおもしろくて、日本でランドオペレーターをやっている会社の経営者は、華僑をはじめ外国人の方が多いのです。みなさんファミリービジネスの感覚で事業をやってらっしゃるので、事業を拡大しようとする動きは少なく、ほとんどの会社は従業員が10数名以下です。われわれは人の採用をはじめ積極的に投資を続けてきたので、その点で優位に立っているのかなと。

【田原】じゃ、ライバルといっても脅威ではない?

【須田】ベトナムの代理店に食い込んでいるのはここ、インドネシアならあそこというように、局地的にはライバルがいます。ただ、全方面でわれわれと戦っているのは1社だけです。大手のJTBさんはヨーロッパ、H.I.Sさんもタイがメインなので、全面戦争にはなっていないです。

大手代理店が注力しない理由

【田原】伸びている市場なのに、どうして大手の旅行会社は注力しないんだろう?

【須田】日本の大手旅行会社は、高度経済成長期の日本人の国内旅行で大きく成長しました。国内旅行で育ってきた人がいま上で力を持っているから、自分たちが引退するまではインバウンドに力を入れる気にならないのでしょう。社内の空気がそうだから、優秀な人はインバウンド事業の部署に来ないと聞きました。

【田原】なるほど。大手でインバウントをやるのは主流から外れた人なんだ。

【須田】大手でインバウンドを担当している方は大変なようです。インバウンドで欠かせないのは、ホテルの部屋の確保です。大手旅行会社は部屋を大量に確保していますが、国内旅行の日本人用が優先で、組織内で力の弱いインバウンド事業に回ってこない。そんな状態では、いくらいいプランを立てても販売できませんから。