出国者数は1億人を突破。いま中国は空前の「海外旅行ブーム」だ。10月1日の「国慶節」から始まった大型連休には、約40万人が訪日したという。だが、「爆買い」のパターンは変わりつつある。中国通の筆者が探る最新事情とは――。
法改正で大型船なら「ビザ」が不要になった
8月下旬の金曜日、午前7時。博多港に巨大クルーズ船が到着していた。船名は「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」。2014年11月に就航したばかりの新造船だ。海面からの高さは約60メートル。20階建てのビルが300メートル以上の幅で連なっている様子をイメージしてほしい。最大乗客定員4905人、大きさでは世界第2位。今回は上海を発着地とする4泊5日のクルーズで、博多港が唯一の寄港地である。
船の横にはカラフルな観光バスが並んでいる。会社名はバラバラだ。近隣だけでは必要台数を確保できないからだろう、熊本や大分など九州全域のバス会社の名前が確認できた。
「携程(中国の旅行会社)の方、こちらですよー」
中国人ガイドの女性が、大きなしゃもじのような看板を手に、下船した乗客を観光バスに誘導していく。乗客の多くは団体旅行客だ。中国人の団体旅行ではマナーの悪さが指摘されることも少なくないが、クルーズ船の乗客は身なりも整っており、行列を乱す様子もない。
博多港では、入国手続きをスムーズにするため、今年5月に「クルーズセンター」を開いたが、この船は大きすぎるためセンターのある「中央埠頭」が使えず、貨物用の「箱崎埠頭」に着岸している。施設がないため入国審査は船内で行われているが、地上より手間がかかり、この日は乗客も多いため、全員の入国手続きには3時間程度かかるという。