昨年4月の消費税増税以降、低迷が続く小売業が外国人観光客に色めき立っている。2014年に過去最高を更新した訪日外国人観光客は、15年も引き続き大きな伸びが予想されるからだ。何せ、消費総額で年間2兆305億円(14年、観光庁調べ)ものお金を日本に落とすパワーは無視できない。
とりわけ、14年に約5600億円とその4分の1超を占めた中国人観光客の存在は、まさに“救世主”。今年も春節(旧正月)を祝う2月18日から7日間の大型連休に大挙して日本に押し寄せているとみられ、東京、大阪の百貨店がこぞって中国人観光客対応に動くなど、小売業界はさながら「チャイナ狂騒曲」の様相を呈している。
「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人観光客の勢いが止まらない。日本政府観光局がまとめた14年の訪日外国人観光客は前年から29%増の1341万人と過去最高を記録。14年の国際収支を見ても、日本の海外旅行者が海外でお金を使い慢性赤字が続く旅行収支は赤字額が1251億円と、前年比5294億円減の過去最小になった。日本を訪れる外国人観光客の急増が赤字縮小に大きく寄与し、15年の旅行収支が黒字に転じる可能性もある。
政府は東京五輪・パラリンピックが開催される20年に「訪日外国人旅行者2000万人」との目標を掲げ、観光ビザ(査証)の免除や緩和に動き、14年の訪日外国人観光客大幅増加の一因となった。所管する太田昭宏国土交通相も、「20年の2000万人達成が現実味を帯びてきた」とご満悦だ。
しかし、訪日外国人観光客の増加を加速したのは、ひとえに日銀による量的緩和が円安に誘導した効果が大きい。円安に加え、昨年10月に訪日観光客に対してすべての商品への消費税免税適用を拡大した効果が重なり、訪日外国人観光客の消費総額は前年から43.3%も伸び、過去最高を記録した。
半面、日本人の個人消費に勢いがないだけに、中国人観光客の「爆買い」のようなインバウンド消費をちゃんと取り込まないと、売り上げは伸びない。チャイナ狂騒曲は、苦悩する小売業の今をまざまざと見せつけてもいる。