今や日本の輸出相手国シェアの約2割を占める中国。政治的には緊張関係が続くが、この国での成功が利益に直結するのも事実だ。

3高マーケティング:月収の5分の1の高額商品が売れる理由

資生堂/資生堂の子会社が中国で展開しているヘアケアブランド「アクエア」。

直接口には入れないものの安全性が鋭く問われる商品に、化粧品がある。肌に直接塗るものだけに、中国製の化粧品はなるべく使いたくないと考えている中国人女性は、実はとても多いのだ。

そんな中国人女性に大人気なのが、資生堂だ。資生堂が中国に進出したのは、日本企業としては極めて早い81年のこと。資生堂は、進出当初から「3高マーケティング」と「100元マーケティング」というふたつのポリシーを貫いてきた。3高マーケティングとは、

・高形象→High Image
・高品質→High Quality
・高服務→High Service

つまり、イメージ、品質、サービスの3つを高めることによってモノを売るということ。一方の100元マーケティングとは、中国との合弁生産品である「オプレ」を100元で売ることを指す。

オプレは94年の発売だが、この当時の都市部の1人当たり平均所得が月額500元である。100元の化粧品は月給の5分の1に相当する高額商品だった。資生堂は、アサヒビールの「唯品」同様、値段を高く設定することによって、高級感と品質の高さを強くアピールする戦略をぶれさせなかったのである。

ファンケル/ファンケルも資生堂と同様、ブランドイメージと安全性で人気がある。

また、小売店舗1店1店を対象とした地道な市場開拓、中国研究開発センターにおける、中国人の好みに合わせた、現地発の化粧品開発、研修センターでの社員に対する徹底的なサービス精神の教育等の施策により、現地化努力を行っている。

中国では伝統的に、メーカーよりも小売店の力が強く、売掛金の回収ができないケースが非常に多いのだが、資生堂は完全に定着したブランド力を背景として、売掛金の回収率99%という驚異的な数字を達成しているのである。

中国人は日本の技術力を高く評価しており日本製品は憧れの的だが、ただ日本製であるというだけで売れるほど中国市場は甘くない。商習慣も文化も異なる中国でモノを売るには、資生堂のように腰を据えた粘り強い営業活動が不可欠なのである。