あのご飯をもう一度:大陸米は日本米に勝てない
旅行で日本にやってきた中国人が必ず買い求めるもののひとつが、炊飯器である。理由はよくわからないが、ともかく日本製の炊飯器は大人気だ。しかも、日本国内で主流の2万円前後の製品ではなく、4万~5万円の高級品に人気が集中しているという。
なぜ、炊飯器なのか。弊社の中国人スタッフに理由を聞いてみてもその答えは様々で、本当の理由はよくわからない。
筆者の見るところ、炊飯器ブームの理由は、日本のご飯のおいしさにある。中国の米は、基本的に大陸米(長粒米)であり、ポロポロパサパサしている。チャーハンにすればおいしいが、ご飯単独で食べた場合、しっとりした日本のご飯のおいしさには到底かなわない。
中国人にきちんと炊いた日本の米を食べさせると、あまりのおいしさに一様に驚嘆する。あのご飯をもう一度! と思うのも無理からぬことである。
ところが、日本米を中国で手に入れるのは至難の業なのである。値段もさることながら、そもそもほとんど流通していない。また、中国では美的や格力電器といった家電メーカーが急成長を遂げているが、正直言って値段が安いから売れているだけで品質はまだまだである。日本米が手に入らないならば、せめて炊飯器だけでも日本製を使いたいというのが中国人の本音ではないだろうか。
日本製の炊飯器で大陸米を炊いておいしいかどうかはわからないが、その程度の贅沢ができる中国人が増えてきたことのひとつの証しであろう。
(構成=山田清機 撮影=Cui Ming)