経営層が現場社員に長時間残業を強いる
調べると、黒幕的な役員がいるのは、大企業より中堅・中小企業に多いようだ。前出・コンサルタントは言う。
「社員に『業界の会合でこんな話を聞いたのだが、調べてくれないか』とか『この案件についてまとめておいてくれないか』と役員が指示しているケースが非常に多かった。しかも、必ずしも緊急を要する重要な案件ではなく、思いつきで指示する内容が多いのですが、社員としてはそれに応えようと日頃の業務の時間を割いて仕事をする。役員の中には社員が依頼された報告書を届けても『これ何? ああそうだっけ』と半ば忘れていた人もいたようです」
コンサルタントが調査した結果、ある企業ではムダな労働時間を生み出していた役員は6人中5人もいたという。
そして役員が指示して発生させたムダな労働時間を一人ひとり調べて社長に報告し、是正を求めたが社長に「ちょっと待ってくれ、そこまでやってくれとは言っていない」と言われて、プロジェクトの中止を求められたそうだ。
この会社に限らず、役員の指示が原因で長時間労働を生んでいる会社がかなりの数にのぼるらしい。
多くの会社では上司の部下に対する仕事の与え方、あるいは社員自身の仕事のやり方に原因があると考えている節がある。もちろん、そこにも一部の原因があるのは事実だろう。
しかし、灯台もと暗し、ではないが、会社の司令塔自身が社員に長時間残業を強いている現実も直視するべきではないだろうか。