個人の働き方が間違っているのか!?

なぜ日本人の長時間労働はなくならないのか――。官民を挙げた働き方の見直しが叫ばれ、政府は長時間残業の取り締まりを強化し、企業は朝方勤務などの残業規制策を強化しつつある。だが、結果として“持ち帰り残業”が増えるだけではないかという声もある。

また、日本に比べて欧米企業の残業時間が少ないのは、職務・役割を限定した職務主義の働き方が主流だからという意見もあるが、職務主義を導入している日本の外資系企業でも長時間労働が蔓延している。その背景には組織のあり方や仕事を与える管理職の資質など様々な原因があるにしても、やはり個々人の仕事のやり方が効率的ではないのではないか、極端に言えば個人の働き方が間違っていることにも原因の一つがあるように思う。

ではどうすれば効率的な働き方ができるのか。そこで生産性の研究では世界的権威で知られるデビッド・アレンが開発した「仕事の整理術」の手法であるGTD(R)(Geting Things Done)に関心を持ち、彼の著作(『ストレスフリーの整理術』)を読み、日本で開催しているGTDの研修を覗いてみた。

日本で唯一GTDの研修を実施しているラーニング・マスターズ社の研修風景。

アレンの手法はアメリカの「フォーチュン100」に名を連ねる企業の40%が導入し、著名企業の経営者が実践していることで知られる。また、NASAの第一線のエンジニアやプロジェクトマネージャーが毎年100人近く受講し、日本でも大手企業を中心に受講者が増えているという。

日本で唯一GTDの研修を実施しているラーニング・マスターズ社の東京の会場に集まった受講者は企業の若手社員からミドルクラスと思われる人が20人ほど。中には名古屋から参加した弁護士もおり、マスタートレーナーの資格を持つ近藤克明氏の講義に熱心に聞き入っていた。

受講者は毎回増えているというが、その動機について近藤氏は「一言で言えばマルチタスクの問題です。一担当の仕事とは別の仕事を兼務し、たくさんの課題が押し寄せてなんとか解決したいという思いがある。プレイングマネージャーの場合は自ら顧客を抱え、チームのマネジメントもやらないといけないという悩みも抱えています。それに加えて最近は長時間労働の規制が厳しくなり、増える仕事をどう処理すればよいのか行き詰まっている人も増えています」と語る。