頭の中にあるものを吐き出すこと

確かに今の知識集約型のビジネスの世界は自分でこなせる以上の仕事が押し寄せるなど複雑化している。GTDの手法はそうした複雑化する仕事を前提に、やるべきことをきちんとこなしつつ、心にゆとりをもって最大限の効率で仕事をこなしていくための手法だという。

いつ何をするのかというタイムマネジメント(時間管理)の手法とも異なり、課題を短・中・長期に分けてシステマチックに実践することで着実に仕事をこなしていくことを目指している。基本となるステップは以下の5つだ。

(1)把握する(新たに発生する仕事や、「気になること」をすべて集めて把握する)
(2)見極める(集めた「気になること」の意味することを考え、行動できることかどうか、どのように行動するかを見極める)
(3)整理する(見極めたことが、いつでも行動または処理できるように、整理する)
(4)更新する(「把握する」~「整理する」までを適宜、かつ定期的に行い、最新の状態にする)
(5)選択する(状況や優先順位に合わせて最適な行動・処理を選択し、実行する)

初心者にとってとくに肝になるのが最初の把握することと見極める手法だ。課題を把握することぐらいやっているよ、という人もいるかもしれないが、多くの人は目先の仕事やデスクの前に置かれた書類程度に限られる。だが、GTDは頭や心の隅に引っかかっているごく些細なことまで吐き出すことから始まる。

「把握する」のポイントについて近藤氏はこう指摘する。

「自分のデスク上または周辺にあるもの、やりかけのまま残っていることや実行しようと思っていても手を付けていないこと、仕事のメールなどすべてを一時的な受け皿であるインボックス(処理前箱)に入れることから始まります。それだけではなく、何とかしないといけないという頭の中に溜まっているアイデアやもやもやとしたものをメモ用紙に書いてインボックスに入れる。頭の中にあるものを吐き出すことをマインドスイープと言いますが、それらをすべて外に出すことがポイントです」

もちろん吐き出す中身は仕事以外の家族のことなど気になっているプライベートも含む。気になることを頭の外に追い出すことでストレスから解放され、気分がスッキリすると語る受講者も多い。行動を起こすための「見極める」プロセスも独特だ。