仕事の責任と優先順位を明確にする

そのポイントは、一つひとつについて「これは何か」と自分に問い、「行動を起こす必要があるのか」を自分で考え、決めていくことにある。行動を起こす必要のないものは(1)捨てる・削除する、(2)資料として保存する、(3)今やる必要はないが、いつかやる必要が出てくるかもしれないものは「保留する」――の3つに分類する。

保留には金も時間もなく優先順位が低いものや年末に作業すればすむものも入る。残ったものが「行動を起こす必要があるもの」だが、ここにもGTDならではのコツがある。

目に見える次にとるべき行動については(1)今すぐやる(2分以内で完了できること)、(2)誰かに任せる(他の人によって完了できること)、(3)後でやる(2分以上かかり、自分でやるべきこと)――の3つに区分する。

しかし、中にはどのように行動すればよいのかすぐにわからないものもある。あるいはやる必要があるが気持ちとして先送りしたいものもある。それに対処するには「気になること」を曖昧なままにせず、行動すると判断したら(1)次にとるべき具体的な行動とは何か、(2)望んでいる結果とは何かを明確にし、必要であれば複数の段階に分けて、やるべき行動を見える化していくことだという。

「メモに『新しい担当職務の業務の優先順位が不明確である』と書いてあったとします。まずは実現に向けた具体的なとるべき行動とは何かを考え、たとえば『前任者に業務内容を確認するミーティングをメールで依頼する』という行動を設定します。次に自分は何をしたいのか、つまり望んでいる結果をイメージし、『仕事の責任と優先順位を明確にする』と設定します。望んでいる結果に近づいていくために最初の一歩の行動を小さくし、行動をいくつかのステップに分けると実践しやすくなります」(近藤氏)

たとえば先送りにしていた「新規顧客向けの提案書をまとめる」ことを実現するための第一歩を「ネットで業界情報を集める」という行動を設定すれば動きやすくなる。1カ月後の締め切り原稿になかなか踏み出せない筆者だが、近藤氏から「PCの電源を入れて原稿用紙にタイトルを打ち込む、という最初の行動を決めればどうでしょう」と言われたが、確かにそれならできるかもしれないと思った。

気になることを把握し、見極める作業を進めると、仕事の完了に向けた「次にとるべき行動リスト」が出来上がる。そして行動できるように整理し、やるべき行動リストを定期的に確認し、新たに追加するなど「更新」し、実行していくのだ。

近藤氏は「気になるすべての情報を集めて、これは何か、行動を起こす必要があるのか、次にとるべき行動は何かを常に考え、とるべき行動をリスト化するという連続作業を自分の中で習慣化することが大事なポイント。そうすればゆとりをもって効率的に仕事をこなすことができるようになります」と指摘する。

実際にやるべき行動を目に見える形にすることで「これらを終わらせてしまいたいという前向きな気持ちが沸いてくる」と言う受講者も多い。一見、単純な手法に見えるかもしれないが、その中身は合理的な「ワークフロー管理手法」ともいえるものだ。多くの課題が明確になり、とるべき行動に集中できるのであれば、実践してみる価値はありそうだ。

(ラーニング・マスターズ社=写真提供)
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