米軍将校の間で爆発的ブームになった

一冊目は、ピーター・シンガー、オーガスト・コールによる『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(上・下)』(二見文庫)である。これは国防総省の技術研究プロジェクトの代表が小説の体を借りて、現在の米軍が抱える深刻な問題を指摘する著作である。

『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(上・下)』(二見文庫)

邦題の安っぽさはさておき、すこぶる小説として面白い。米国人ではないのに後半の反撃の展開には「USA! USA!」と叫びたくなるほどだ。そして、何よりも、中国が営々と何十年も行ってきた軍拡が、いかに米国の弱点を突いており、米国にとって脅威となっているかがわかりやすく理解できることは、特筆すべき点である。

実際、本書は米軍将校たちの間で爆発的なブームを巻き起こし、米陸海空軍と米宇宙軍司令部で“推薦図書”となっている。本書の著者たちは、米議会や国家安全保障会議スタッフに対して「(本書の)現実への教訓」についてのレクチャーを施しており、まさに警鐘の書なのである。

本書のあらすじは、2025年、中国軍が宇宙から“真珠湾攻撃”を開始し、それによって米軍が一方的に撃破されるというものである。米国は、宇宙制空権を中国に奪われ、通信・偵察機能を喪失したことで“目隠し状態”にされる。また、高度にインターネット化された米国製兵器が、中国によるサイバー攻撃や「偽部品」によって機能を停止されてしまう。ほとんど行動不能になった米軍は、中国軍の奇襲に対処できず、在日米軍はたった6日で壊滅。米海軍も壊滅し、中国にハワイ諸島を占領されてしまう。そこで米軍はローテク兵器と「民間活力」で反撃を試みる――というものである。

本書が提起する問題は、“ミニ米軍”である自衛隊を抱える我が国にとって、より深刻に受け止めねばならない問題であることは言うまでもない。その意味で、日本人にとっても必読の書と言えよう。