中国語には「舎得(シェダ)」という熟語がある。「惜しまない」という意味だ。否定表現は「舎不得(シェブダ)」となり、「惜しいと思う」という意味だ。

漢字の面白さは、一つ一つの文字に意味があることだが、それぞれの文字のもつ意味から理解すると、「舎得」は「捨てることによって得ることができる」となる。つまり惜しまずに思い切って捨てれば、逆に得ることができるのだ、という意味だ。これは仏教からきた言葉のようだ。仏教では「舎得」のことを「あげてこそ、もらうことがある」と説いている。

もう一つ、かの孟子が次のような発言をしている。「魚は我が欲しいものだ。熊掌(熊の手)も我が欲しいものだ。二者を同時に得ることができなければ、魚を捨てて熊掌を取る」。やがてこの話は「魚と熊の手は同時には得られない」ということわざに昇華し、中国人の生活に溶け込んでいく。『トレードオフ』を読んだとき、私はこれら2つの中国語表現を思い浮かべていた。