では、「数字に強い人」はどういう作業をするのか。「0.8×1.5=1.2」。これだけだ。たった1回のかけ算で終了である。要するに、「売上高=平均客単価×来店者数×購入率」は前月も今月も同じなので、変化したところだけに注目するのだ。そうすれば、「C」ボタンを押して、同じ数字を再入力するようなムダは省ける。
いま説明した差について、あなたは「そんな細かい話?」と思うかもしれないが、少しでも数字に強くなりたいのであれば、その考えを改めていただきたい。たとえば、プレゼン力でも会話力でも、それらがある人とない人の差はほんのわずかのはず。しかし、その小さな差の積み重ねが、大きな差となって表れてくるものなのだ。
ところで、今回の問題で、「メモリー機能は使用不可」というただし書きをしたが、このメモリー機能についてはご存じない人も多いのではないか。知っておくと便利なので簡単に紹介したい(図参照)。
たとえば、「M+」の使い方。「150円のドーナツを3つ、110円のコーヒーを5杯買ったときの合計金額」を出す場合、「150×3[M+]」、続けて「110×5[M+]」、続けて「RM/CM」と押すと「1,000」と出る。「M-」の使い方も同様である。
最後に、誤解しないでいただきたいのは、メモリー機能を知っている人が数字に強いわけではないということ。大切なのは、「C」ボタンの話のような思考力で、知識の有無ではないということだ。
(構成=田之上 信 写真=AFLO)