あなたの脳は、何か大きな思い違いをしていませんか? 長い歴史を持つ「経済学」でも、「脳の弱点」を無視したモデルが採用されていました。人間の脳がどれだけいい加減で不合理なものか。5つのクイズで証明します。

「無料の記念品」でも売り惜しむのが人間だ

私はいま一橋大学などで実験経済学を学生に教えています。これは文字通り、実験を行う経済学です。教室に集まった学生たちに、さまざまな課題を投げかけ、その結果を経済学の市場理論に照らし合わせるのです。

今回、腕試しとして「初級編」に2問、そして「中級編」では授業にも使っている3問の「クイズ」を用意しました。クイズといっても、特に「中級編」は正解のあるものではありません。あなたの思考の癖を知るための心理テストに近いものです。中級編3問の合計点で、3つのタイプに判定されます。ぜひチャレンジしてください。

実験経済学という言葉に馴染みのある方はまだ多くないと思います。経済学に対しては、「机上の空論じゃないか」というイメージをもつ人もいるようです。確かにこれまでの経済学は「自分の利益を最大化する完全に合理的な人間(経済人)」を理論の前提としてきました。一方で現実の人間はときに利他的、非合理的な行動もします。その弱点を補うのが実験経済学です。現実の人間がどう判断し、どう行動するか。実験を通じて、現実に則した理論の再構築を目指しています。

具体的な実験例を紹介しましょう。

私が学生59人を対象に行った実験があります。まず、学生全員に本の栞(しおり)を手渡し、色や素材、手触りなどを見てもらい、各々の判断で「どれくらいの価値があるのか」を考えてもらいます。次に学生全員の中から無作為に19人を選び、先ほどの栞を渡します。そのうえで栞をもらった学生ともらわなかった学生に、「売り手」と「買い手」に分かれてもらい、売る場合と買う場合での値段の差を調べるのです。用意した栞は、特別なものではありません。平均すれば売り手も買い手も、同じぐらいの値段になる――。そう予想する人が多いのではないでしょうか。