場の空気を読まないと「利得の最大化」は困難

クイズの結果はいかがでしたか?

点数が低い人ほど「お人好しでナイーブ」、高い人ほど「損得勘定にとらわれすぎ」といえます。現実世界で「期待利得の最大化」を図るためには、場の空気や相手の感情を読み、バランスのとれた判断を下す必要があります。

経済学は20世紀に入るまでは主に国富や貿易といったマクロなものが対象でしたが、20世紀から企業や消費者といったミクロなものにも広がりました。経済学者たちは個々の意思決定に非合理的な行動があることはわかっていましたが、便宜的に「経済人」という仮定を採用し、この仮定が経済学を大きく進歩させました。その一方、20世紀半ばから、現実とのギャップが再認識され、1970年代から実験経済学の動きがあらわれます。2002年には2人の研究者に実験経済学の功績からノーベル経済学賞が授与され、その地位が確立されました。

経済学は人間の意思決定のプロセスを研究する学問です。「経済人」という仮定でつくられた経済理論を、さまざまな手法で実験してみることで、現実の人間の興味深い傾向がわかってきました。経済学は机上の空論による「冷たい学問」ではなく、現実社会と密接に関わる「熱い学問」。そのことが少しでも伝われば嬉しいです。

一橋大学大学院経済学研究科准教授 竹内幹
1974年、東京都生まれ。一橋大学大学院経済学研究科准教授。一橋大学を卒業後、ミシガン大学で経済学Ph.D.(博士号)取得。カリフォルニア工科大学研究員を経て、現職。専門は実験経済学。2児の父親として共働き育児中。
(構成=宮上徳重)
【関連記事】
“Not Yet”思考で落ちこぼれが変わる
「損」を恐れすぎると、結果「損」をする!?
「目先の利益」と「人の頼み」優先すべきはどちらか
ムダな時間を使わない! 仕事の効率を上げる思考法3
一流は5つの「因数分解」で悩みを消す