漠とした不安。湧かぬ意欲。取れない疲れ……。そんな心の病巣を、外科医の捌くメスのように的確に探り当てるのは、古今の碩学の紡いだ英知の言葉。小説家・須藤靖貴氏に、その珠玉の数々を選び抜いていただいた。

不決断こそ、
最大の害悪である。
――R・デカルト●仏・哲学者、数学者

近代哲学の祖。哲学の第一原理「我思う、ゆえに我あり」という言葉はあまりに有名。『情念論』の一節であり、文字通り決断しない、できないことの不毛さに触れている。

 

高みに登る人は皆、
螺旋階段を使うものだ。
――F・ベーコン●英・哲学者、神学者

「知識は力なり」の一言で知られる哲学者。志の高い人は、昇るのが苦しい螺旋階段にあえて挑み、時間をかけずに一気に駆け上がる。すると結果的に、より近道となる。

高く昇ろうと思うなら、
自分の足を使う。
高いところへは、
他人に運ばれてはならない。
人の背中や頭に乗ってはならない。
――F・ニーチェ●独・哲学者

安易に群れて安心を得ようとするのは、自分を正しく愛せていないからだという。自分を正しく愛するためには、苦痛でもまず自力で高みを目指さねばならない。