漠とした不安。湧かぬ意欲。取れない疲れ……。そんな心の病巣を、外科医の捌くメスのように的確に探り当てるのは、古今の碩学の紡いだ英知の言葉。小説家・須藤靖貴氏に、その珠玉の数々を選び抜いていただいた。
煩悩を断つのは大変だ。
でも、逆に煩悩を断ってしまうと、
エネルギーがなくなってくる。
煩悩はいい意味で利用することが大切です。
仏教の精神は遺伝子の中に含まれています。
それは、自己を生きながらえさせようとする
自利の要素と、自分を犠牲にしても
子孫を残そうとする利他の要素です。
――梅原 猛●哲学者
現在、国際日本文化研究センター顧問。人間の煩悩を断つために仏・菩薩がかける誓願「煩悩無数誓願断」を解説した一節と、自利自他の精神をおのずから持つ人生を立派に生きよう、という進言。
合理性ばかり追求して心の余裕をなくし、
人間らしい事柄をも無駄だと見なしていると、
結局は人生そのものを台無しにする。
疲れを感じたら、
無駄にあれこれ考えずに休むか、
寝てしまおう。
――F・ニーチェ●独・哲学者
「神は死んだ」という傲然とした物言いで知られるニーチェだが、“超訳”ブームでこうした「癒やし」の一節も知られるように。前者は著書『漂泊者とその影』、後者は同『悦ばしき知識』より。