――逆に打たれ弱かったり、あきらめの早い子もいるのですか。
【日大】推薦・AO入試組はどうしても一般入試組に比べて、ここ一番で頑張る力が弱い子が多い気がします。推薦入学の子たちは、“成績のいい、聞き分けのいい子”なんですよ。高校の3年間、全教科を満遍なく勉強してきた。大学に入ってからも成績がいい。しかし、“どうしてもこの大学に入りたい”といった大きな目標に向けて、徹底的に取り組んだ経験が少ない子が多い。
【早稲田】推薦入試の子が弱いというのは、うちの大学でも感じます。推薦で入学してきた学生は、“この研究がしたい”というのではなく、高校に推薦枠があって、大学名に引かれてなんとなく入学したという子が多い。もちろん、入学後に研究の楽しさに気づく子も多いですし、高校までとは評価のルールが違うんだと順応する子も多いですが、その一方で“早稲田の理工”の看板を手にしたことで満足し、力尽きてしまう子もいます。研究は発想力と粘り強さが大事なのですが、どちらも研究が好きでないと身につきません。理系の場合、研究成果と就職が直結する部分もありますから、就活で苦労しています。
――そういう点で言えば、推薦入試は一般的ではない、国立大の場合はいかがでしょうか。
【国立大】国立大にももちろん、就職先が決まらない子がいます。どこにも決まらない学生を見ていると、“この子が国立大に受かったとき、親御さんもご本人も嬉しかったろうな。でも、就職は保証されていないのか”と想像し、切なくなります。
――身近で見ていらして、どういう学生に多いでしょうか。
【国立大】以前は “この子は少し人間関係は下手そうだけど、国立大に入ったくらいだから勉強を頑張ってきたのだし、さらに会社で鍛えてやろう”と企業も度量が広かったのですが、今や面接の場では“自分が企業で役に立つ”ことを明快にプレゼンすることを求められています。そういう点で、遊びも上手な“要領のよさ”のある子は強い。彼らは弁が立つし、人前に立つ経験も豊富。去年は女の子好きを自認するお調子者が外資系金融に決まりました。
【早稲田】口下手な子は不利ですよね。研究の成果をプレゼンさせると、内容以上に見せる子と、内容はいいのにプレゼンでは惜しい子がいます。後者の子は、実際の面接でも損をしてしまいます。
――真面目にやっていても評価されないのは、理不尽な気もしますね。
【国立大】今の日本の受験制度は、筆記試験を中心とした学力を評価しています。なので、真面目な子が“いい大学”に入学することが多い。真面目さが評価されることは大事です。しかし、就職活動をはじめ、社会での個人の能力は、筆記試験ほど客観的な物差しでは測られていません。見方を変えれば、“いい大学”に合格しても、それはたまたま今の大学受験のルールでうまくいっただけかもしれません。少なくとも、そう割り切らないと、就職活動のスタートラインにすら立てません。
【一同】(うなずく)
【早稲田】そういう意味では、大学受験と同じ思考でネームバリューで企業を選んでいる子は、苦戦するし、生き方としてももったいない。せっかくいい大学に入学したのだから、有名企業に入らないと恥ずかしいと思ってしまう。“有名じゃないけど、この分野では一番の企業の内定を取りました”って言いに来る子は、すごくいい笑顔をしている。