次に、同盟解体の間接経費である。これは「貿易」「金融」「エネルギー」の3点に着目し、GDPへの影響を数値化した。
まず、同盟解体による日本の貿易への負の影響である。ここでは10年度の貿易額の数字を用い、日本から米国への輸出額10兆3740億円が完全にゼロとなると想定、GDPが米国からの年間輸入額相当分の6兆8250億円低下するとした。
次に、日経平均株価が210円下落するとGDPの1兆円減少につながると仮定。同盟解体によって日経平均が25%下落し(08年のリーマンショックを想定)、12兆円のGDP低下を引き起こすと試算した。
さらに同盟解体は海上輸送の危険度を増し、エネルギー資源の輸送コストを押し上げる。原油輸入価格が1バレル当たり10ドル上昇し、これがGDPの1兆~2.5兆円の減少をもたらすとした。
これらの直接費用と間接費用を総計し、そこから現在の日米同盟の維持費用を差し引いた負担増加額は、22兆2661億~23兆7661億円となる。これが日米同盟解体のコストである。しかもこれだけの費用を投じても、「核の傘」やミサイル防衛システムを失い、米国との関係も悪化することで、安全保障の水準は大きく下がることになる。
もっとも、ここでの間接費用の試算はかなり簡易的なものであり、冒頭で述べた通り「23兆円」という数字の独り歩きは問題なしとしない。
重要なのは、直接予算に計上される費用以外にも、日米同盟の維持や解体に必要なコストは多々あり、そうした間接費用をも考慮しなければ、同盟維持にかかる正確な国益は見えてこない、という事実である。より精度の高い試算については後進に期待したい。
(構成=久保田正志 図版作成=大橋昭一 写真=共同通信社)