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自主防衛に転じたら、あといくらかかるか?

私は武藤功・防衛大学校教授との共著『コストを試算! 日米同盟解体』(12年刊)で、「現在の日米同盟体制とできるだけ同じ安全保障の水準を保つ」という前提の下に、現行の日米同盟のコストと自主防衛に踏み切った際のコストの比較を試みた。その結果、自主防衛にかかるコストの総計が日米同盟下のそれを22兆2661億~23兆7661億円上回るという結果が出た。

ただしこれは、現在の年間防衛費約5兆円と単純に比較する性格のものではない。数字の独り歩きを戒める意味でも、以下でその算出の経緯をたどっていく(特に断り書きのない数値は12年度のもの)。 

計算上、在日米軍の人員や装備を維持するための費用、同盟を破棄して自衛隊に置き換えるのに必要な費用を「直接経費」と呼ぶ。直接経費には、日米地位協定で定められた施設・区域の提供およびその所有者への補償に加え、米軍基地従業員の労務費の負担などのいわゆる“思いやり予算”などが含まれる。また、自主防衛のための装備調達費がある。

加えて、現実には直接経費以外の目に見えない費用が存在する。これを「逸失利益(機会費用)」と呼ぶ。日米同盟維持の逸失利益には、基地のある土地を別な形で利用した場合の収益や、自治体が得たであろう固定資産税額や、住民税等の税収などがある。同盟解体の逸失利益は、日米同盟が存在することで得ていた安全保障以外の便益である。

今回の試算の特徴は、数値化が難しいこうしたコストについても、あえて間接経費としてカウントしたことにある。この前提の下での日米同盟解体のコストは、下記の通りだ。

(日米同盟を自主防衛で代替した場合に必要な直接経費+同盟解体に伴う逸失利益)-(日米同盟を維持していくための直接経費+同盟を維持していくための逸失利益)。

このうち同盟を維持していくための直接経費は、政府予算として計上されている。在日米軍の駐留に関する経費は、12年度の場合、3689億円。これに米軍再編関係経費599億円、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係経費86億円が加わり、その費用は約4374億円。15年度であれば約5200億円である。わが国は国内の米軍駐留経費のおよそ75%を負担しており、この割合は米国の全同盟国27カ国の中で最も高い。

同盟維持の間接経費には、自治体が失う税収、基地跡地の経済効果、基地関連の事件・事故処理の費用などが含まれ、12年度の場合で約1兆3284億円と試算した。これで、日米同盟維持のためのコストは直接経費・間接経費で計1兆7658億円となる。日米同盟を解体すれば必要なくなる費用である。