第2の核攻撃抑止力だが、米軍の「核の傘」がなくなった際、日本が独自に核武装するという選択肢はありうるだろうか。
結論からいえば否だ。日本が核武装を行えば、核不拡散条約(NPT)からの脱退は必然だ。すると、「非核兵器国に対しては核兵器を使用せず、核攻撃を受けた非核兵器国に必要な援助を行う」という、核兵器国による消極的・積極的安全保障が失われ、実際に核兵器を開発・装備するまでの間、核攻撃に対し無防備な状態に置かれることになる。この間、日本は経済制裁の対象となり、日本の核兵器開発を実力で阻止する動きが出てくる可能性もある。
また日本が核武装すれば、周辺諸国もドミノ倒し的に核武装を始める可能性もあり、さらに米国が日本を友好国と見なさなくなる恐れもある。わが国は核武装することで、かえって安全保障のレベルが低下してしまうことは確実といえる。
このため、「現在の安全保障水準を維持する」という試算の前提上、「米国の核の傘を失ったとしても、核武装の選択はすべきではない」と考えられ、今回の算出費用に核武装分は見込まないこととした。
第3のミサイル防衛システムについては、そもそも日本と米国で共同開発されたものであり、同盟を解体すれば現在のシステムは使用不能となる。同様のミサイル防衛システムを日本独自で一から開発・運用することは、現状ではほぼ不可能である。
ミサイル防衛システムの代わりに、発射前に敵ミサイル基地を叩く戦略を採るとしても、敵ミサイルの位置を察知するには、16機以上の情報収集衛星を打ち上げ、高高度を飛行する滞空型無人偵察機を併用して24時間の監視体制を取る必要がある。さらに、実際にミサイルを撃ち込まれた場合に被害を最小化するための民間防衛体制の構築も欠かせない。これらミサイル防衛システムの代替費用は1兆200億円。しかし、これらの処置をもってしても、現在の水準の安全を維持することはできない。以上、自主防衛のための新たな装備品の調達等に必要な直接経費は、4兆2069億円となる。