“オワハラ”はリスクのみで効果なし
秋採用する企業が注意すべきリスクがもう一つある。
「内定を断らせようとして、他社の悪口を学生に吹き込むのは危険です。競合の営業上の信用を害する虚偽の事実を言い触らせば、不正競争防止法違反となりますし、違法性が高い言説には刑法上の偽計業務妨害罪にも該当しえます」
現代は面接で話した内容がSNSを通じて拡散する時代。他社を評価する場合も、誰に聞かれても問題のない表現を意識したほうがいいだろう。
秋採用する側のリスクは見えてきたが、一方で内定者を奪われる側にもリスクはある。内定者にそれ以上就活させないようにする“オワハラ”だ。
「オワハラという言葉のイージーさからは法律問題と意識されないかもしれませんが、部屋に閉じ込めるのも明確に意に反する場合は監禁行為ですし、内定を断る学生にコーヒーをかけて火傷を負わせたら暴行や傷害です。オワハラなどという下劣な行為をすれば学生の心が離れていくだけ。SNSで情報拡散すれば、それこそブラック企業の烙印を押されます。法的なリスクのみならず、企業イメージ戦略上も有害無益です。内定後も安心せず、学生と継続的にコミュニケーションを取るなど、『釣った魚に餌を気前よくやり続ける』地道な努力が一番ですね」
(図版作成=大橋昭一)