8月1日、大学生の就職・採用活動が開始された。経団連が2016年卒入社組から採用面接は8月への「後ろ倒し」を要請したからだ。売り手市場とはいえ、シビアな採用面接が繰り返されているだろう。これまでのポテンシャル採用から「新卒即戦力人材」と呼ぶ採用にシフトしているという。企業が求めるのはどんな学生なのか。『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著 プレジデント社)より、2015年の「後ろ倒し」された「就活」最新事情をお届けする。
グローバル採用と高度の専門知識を持つ学生
2016年卒の学生は15年3月から就職活動がスタートしました。売り手市場とはいえ、大手企業の厳選採用が続いています。
以前は大学の成績などまったく問題にせず、とにかく“地頭”を重視し、何にも染まっていない真っ白の人を対象に、ポテンシャルだけを基準に選考していました。ですが、今は“新卒即戦力人材”と呼ぶべき採用にシフトしています。
1つはグローバル採用枠です。海外で活躍できるグローバル人材が日本企業では決定的に不足しており、新卒でもグローバル素養を持つ学生の獲得を狙っています。
たとえば大手化粧品会社の採用担当者は「全員ではないが、TOEICの点数に限らず、様々な国・人種と融合できるセンスやスキルを持つ異文化受容力を持つ学生を採りたい」と言います。
2つ目のターゲットは高度の専門的知識を持つ学生です。たとえば財務や法務、マーケティングといった専門知識を持つ学生を職種別採用で募集する企業も増えています。また、外資系企業のグーグルの新卒採用は、あくまで専門能力に秀でたプロフェッショナルのみ採用するという方針です。
同社の人事担当者は「日本のソフトハウスのように資質があれば、文系でもプログラマーに育成しますという採用はしていません。エンジニアであれば、コンピュータサイエンスという学問を究めた一流の専門能力を持った学生を求めています。よく新卒の魅力として何にも染まっていない真っ白であることを評価する企業もありますが、うちは逆に真っ白なタイプは必要ない」と言います。
また、グーグルの新卒初任給は学卒、修士卒の区別がなく、個々の能力に応じた初任給を支払っています。日本企業の一律初任給制度と一線を画しています。日本企業でも野村証券の月額初任給54万2000円の「グローバル型社員」の採用では、英語力に加えて、財務、会計、法律、ITなどの専門知識が要求される即戦力人材の獲得が狙いです。
昔のように大学時代は遊ぶだけ遊んで、最後に就活だけがんばるというような時代ではなくなりつつあります。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。