7月27日は、シャープの希望退職の募集開始日だ。希望退職は2012年にも実施しているが、経営再建のために必要と判断。希望退職の対象は45歳~59歳の社員。希望退職とあわせて8月から一般社員の給与を1~2%カット、冬のボーナスも前年の半分の1カ月に減らすという。『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著 プレジデント社)より、サラリーマンのリストラ最新事情をお届けする。
解雇規制の緩和は経済界の悲願
安倍政権の産業競争力会議で解雇をしやすくしようとする議論が行われたことがあります。経済界が高い法人税など日本の競争力を阻害していると主張する6重苦の1つである解雇規制の緩和は、彼らの長年の悲願です。今は最高裁の判例などで解雇は厳しく制限されていますが、経済界からは「解雇を認める場合の合理性を法律で明確にできないか」という意見が常に出てきます。解雇をしやすくすることに賛成する人事関係者も多く、電子部品業の人事部長はメリットをこう言います。
「解雇が容易になれば、追い出し部屋などとマスコミに騒がれることもないし、どこも引き取り手がない社員を無理矢理抱え込む必要がなくなります。以前は人事部員が再就職先を一生懸命に探していましたが、そのための労力やコストも減ることになります」
本人のためにもよいと語るのは食品業の人事部長です。
「使えない社員でも40代後半や50代になるまで居続け、業績悪化でリストラされることになりかねません。それよりも、もっと若い20代、30代前半で辞めれば、まだやり直しがきくし、仕事のチャンスも広がるでしょう」
しかし、中には解雇を容易にするための法制化を危惧する声もあります。金融業の人事課長は「いつでも辞めさせられるとなれば、上司の力が圧倒的に強くなり、部下に丁寧に接し、やる気を持たせようとする努力をしなくなります。今以上にパワハラが横行し、職場がおかしくなるかもしれません」と言います。
じつは解雇規制の緩和で最も有力な案として浮上しているのが「解雇の金銭解決制度」です。政府の規制改革会議が検討するように提言しています。この制度は会社が一定のお金を払うことで解雇できるようにするものですが、いくらのお金が適正なのかを最終的に判断するのは裁判所になります。以前にも制度化が議論されたことがありましたが、結局、廃案になりました。なぜでしょう。当時、取材した最高裁判所の判事は「政府の担当者から法案化できないかと相談を受けたが、金額をいちいち裁判官に決めさせるのは無理だと言って追い返した」と言っていました。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。