ゼロからの価値創造がリーダーの責務
オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)は資本主義経済の本質を革新、イノベーションと捉えて、革新により社会は発展すると述べています。まさしく、資本主義経済は今まで常識とされてきたことを打ち破りながら、社会を豊かなものにしてきたと言えるでしょう。
したがって、資本主義経済下の経営者というものは「イノベーションを起こす人」だと、私は定義しています。失敗を恐れず、世の中に新しいものを提供しつづけていこうという資質が、企業のトップに求められていると思うのです。そして、この資質はトップのみならず、会社の中のあらゆる部署のリーダーに必要なものであるとも言えます。各部署のリーダーたちが、それぞれ創造性を発揮して組織を率いていくことで、会社は大きく伸びるはずです。
ところが日本では、なかなかそうした創造的な組織が成り立ちにくいのです。その理由としては、よく言われるように、もともと日本の企業は年功序列を重んじる傾向にあり、目立った失策をしなければ自動的に組織の長になれるといった企業風土が根底にあることが挙げられるでしょう。さらに、バブル崩壊以降の「失われた10年」あるいは「失われた20年」という括りでいえば、経済全体が停滞、縮小するなかで、企業の経営者が行ってきたのは消極的な対応ばかりで、それが日本の企業社会に通用するようになってしまったということも大きいと思います。
その消極的対応の最たるものが「リストラ」です。経営者としては会社の利益を確保しなければなりませんが、低成長下で売上を伸ばす術が見つからないため、皆こぞってリストラに舵を切ったのです。おかげで、「名経営者とはリストラがうまい人」といった思い違いが、経済界に蔓延することとなりました。