タコツボ化は企業の競争力を損ねる

『グッドリスクをとりなさい!』宮内義彦著(プレジデント社)

企業のなかで仕事をする上での考え方、意識を変えるという点で、いちばん難しいのは縦割り志向の払拭ではないでしょうか。日本に限らず欧米でも同じ傾向は感じられますが、企業や団体などの組織が活動をはじめるにあたって、まず組織図をつくり、それぞれの部署の役割を明確にして、それに従って動こうとします。社員の側も、入社するとまず組織図を見て「自分の担当はここだ」と見定めると、早速そこに穴を掘り始める。タコツボというやつです。

組織図で働く人は、そこに潜って「俺の陣地を守るぞ」とばかりちょっと目を出すだけで周囲と連携しようとしない。まるで隣のタコツボにいる奴は敵だと言わんばかりです。隣の部署は自分たちとは無関係と距離を置いたり、利害が絡んできたりしそうになれば、自分たちのテリトリーを守ろうと躍起になるのです。

動物でも縄張りを守ろうとする習性がありますから、人間の社会でも組織内に縦割り志向が現れるのはやむを得ないのかもしれません。ことに日本の場合、変化したくない、変化できないという意識が強く、自分を取り巻く環境や自分を守ってくれるシステムを、できるだけ変えずに温存したいという意識が強く働くのではないかと思います。

しかし、グローバル化が今後ますます進展し、企業間の競争がさらに熾烈になりつつある状況下では、同じ会社の中でセクショナリズムが強まることは、企業としての競争力を大きく損ねる原因にもなります。共有すべき情報を共有し、商品開発でも営業面でも協力しあえるところでは最大限力を合わせることにより、一つの組織としてワンランク上の総合力を発揮することができるのです。