Q3 長年の取引先を切ってもいいか
【守屋さんの答え】

聖徳太子は17条憲法の第1条に「和を以て貴しとなす」と書きました。たしかに日本人には、従来のやり方を変えることで軋轢を生むぐらいなら、「長年の取引先」との関係を円滑に続けることを選ぶ傾向があります。これはひとつの価値観として理解できます。

しかし、中国では変化に対応して自らを刷新できる人が尊敬を集めてきました。『易経』には「君子は豹変し、小人は面を革(あらた)む」とあります。これは「君子豹変」という四字熟語の出典で、「豹変」とは、動物のヒョウが季節に応じて毛皮の模様を大きく生え替わらせること。つまり立派な人物は自分の過ちがわかれば大胆な自己刷新を図るが、器の小さい人間は表面をいじるだけで中身を変えようとはしない、という意味です。

また『淮南子(えなんじ)』には「年五十にして四十九年の非を知る」とあります。当時の50歳は老人に近い年齢ですが、そんな年齢になっても、過去の人生の過ちを反省し、自らを変えていくことができる、という教えです。

現代においても、社会の活力を生み出す「イノベーション」は、変化のなかから出てくることが知られています。変化を恐れていれば、生き残ることはできません。すなわち、「長年の取引先」にこだわり続ける人は、君子になれない場合もあるのです。