ずさんな経営を改め高収益体質に変える
実際、JALの再建に当たっては、親方日の丸そのもののずさんな経営体質にメスを入れた。会計を知ることは企業経営の基本であるとして、月々の決算を求めたところ、最初は数カ月前の決算がやっと出てくる始末だった。そこで管理会計システムを改め、詳細な部門別収支が翌月にわかるようにした。同時に、稲盛氏は、社員の意識改革にも取り組んだ。運行、客室、整備など、それぞれの現場を足しげく回り、官僚的な社風を変えていった。
こうして社員は自分たちの手でJALを再建していくことができ、奇跡的な業績回復につながったのである。経営破綻後、わずか2年7カ月で再上場を果たしたのは衆知の事実だ。
お客様にとって、社員にとって、本当によい企業であるためには高収益体質の企業であらねばならない。ずさんな経営体質ではいずれ赤字を垂れ流し、社員を苦しめるだろう。それは家計においても同じことなのだ。
事実、稲盛氏は企業経営におけるお金の哲学を実生活でも体現している。1兆円規模の会計を扱う一方で、会食の弁当の原価に目を光らせる。経営の神様と呼ばれる稲盛氏の公私両面から正しいお金の使い方を学ぼう。
(若杉憲司=撮影)