悪条件に打ち克つ、すさまじい信念
例えば、いま自分が年収300万円のお父さんだったら、一体どのような思いを持てばいいのだろうか。現在の境遇に満足せず、さらに高い収入を目指すのなら、稲盛氏は、潜在意識に透徹するほどの強烈な、すさまじいまでの思いを持ち、その目標を達成するための努力をしなければならないという。
つまり『こうなればいいのに……』といった弱々しい希望ではなく、より力強く『どうしても、どんなことがあっても1000万円を稼げるビジネスマンになるのだ』という強烈な思いでなくてはならない。寝ても覚めても、いつもそのことを考えているようでなければいけないのだ。
さらに稲盛氏は、“思い”を“信念”まで高めることの重要性を説く。そうすることによって、社会情勢や経済状況がいかに難しい局面にあっても、願望、目標を達成するための創意工夫と努力が生まれてくるからだ。
つまり、ビジネスマンにも家庭人にとっても大事なことは、心の奥底に不動の信念を持ち続けることなのだ。信念は思いよりワンランク上の、非常に強いパワーがあるから、もしも「状況は我に利あらず」という逆風の場面でも、挫けることなく勇気を奮い起こすことができると稲盛氏は言う。
「残念ながら、最近の経営者はそのことを、あまり重要視しているようには見えません。何かというと『為替の変動で苦しい』とか『マーケットが冷え込んでいて』などという言い訳が先。うまくいかない条件を並べることは簡単ですが、そう思うことが、自分自身を、そして会社を低迷させている元なのです。信念があれば、悪条件を乗り越えてやっていこうという気持ちになれるのです」