高収益経営の実現は、経営者や部門長の理想の一つでしょう。私は、盛和塾の塾生に対して「売り上げの10%くらいは税引前利益がなければ事業とはいえない」と会合のたびにいっています。
どうしてかといいますと、税金を払う前の段階で1割の利益も出ない事業をそのまま拡大させてしまうと、非常にリスクが大きくなるからです。例えば、売上高が20億円で、税引前利益10%というと、それなりに儲けたと思うかもしれません。しかし、そこから半分が税金として引かれます。2億円の利益なら1億円しか残らないということです。
私も経営者になりたての頃は、研究開発、製造、営業に忙しい日々を過ごしていましたが、経理については素人で、ベテランの経理部長に任せていました。あるとき彼と、次のようなやりとりがあったことを記憶しています。
私が「利益は出ましたか?」と訊ねたところ、部長は「売り上げの1割程度の利益が出ました」といいます。そこで「そのお金はどこにあるの?」と聞くと、彼は「お金はありませんよ。まだ売掛金のままですから、税金は銀行から借りて払います」と答えるではありませんか。
いわゆる「勘定合って銭足らず」という状態です。つまり、1割程度の税引前利益が出ていても、場合によっては資金繰りが苦しくなります。手元のキャッシュが少ないようでは、経営戦略上も有効な次の一手が打てません。
経営者としての値打ちとは
ところが、これまでのような不況下では、電機や建設など基幹産業でも税引前利益が1~2%ということもめずらしくありませんでした。大手ですらそうですから、中小企業ではなおさら。塾生のなかにも「一生懸命やっても、それしか出ません」という経営者がかなりいますが、「利益が一ケタでいい」などという考え方は、自分を過小評価していることになります。
そんな人に対して私は「あなたの経営者としての値打ちは、その程度のものなんですか。売り上げに対して1~2%の利益を稼ぐことで満足しているのですか。社員の幸せのためにも、胸に手を当ててよく考えてください」と叱咤激励します。
会社経営もそうですが、結果は一つの方程式で表すことができると思います。それは「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」です。考え方とは、心のあり方、生きる姿勢、熱意はやる気、努力、能力は先天的な知能、体力、健康です。この3つのファクターの掛け算で、よい結果か、悪い結果かが決まるのです。
1932年、鹿児島市に生まれる。55年京都の碍子メーカーである松風工業に就職。59年4月、知人より出資を得て、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立し、現在名誉会長。第二電電企画、KDDIの設立、JALの再建にも携わる。