世界的な大企業からベンチャー企業まで、2000社超もの事業再生に関わってきた経験からいって、赤字の最大の原因は社長が横着なことである。それは部門長においても同じ。なぜなら、部門業績の責任は“ミニ社長”ともいうべき彼らにあるからだ。

ダメな会社に出向くと、そこには見事なまでの共通点がある。70%の社員が利益に関心を持っておらず、真剣なのはほんのひと握りの人たちだけ。しかも、社内には不平、不満が渦巻いている。その原因は、トップが役割を果たしていないことや、明確な理念や目標がないことなどである。

そこで私は、まず誇りを取り戻す意識改革から始める。人はプライドを感じられないことに対しては、精魂を込めて打ち込もうとはしないからだ。

具体的にいうと「みなさんのお子さんたちが学校で『うちのお父さんは、あそこで働いているんだよ』と胸を張れる会社にしましょう」と訴える。すると、皆の目の色が変わってくる。

次に部門業績を立て直す、すなわち利益を生むシナリオづくりがスタートする。ここで大事なのは、いかに赤字部門に適切な目標を設定できるか、それを達成する計画を立てられるか、そしてどう実行していくかということだ。

そこで私が赤字会社で必ず実践しているのが、全社員に「業務チェックリスト」の提出を義務付けることだ。これは1人ひとりが当面の経営課題に向かい合う際に、いつ、何を、誰が、どう仕上げるかを1カ月単位の行動予定にまとめた工程表といっていい。

その業務チェックリストをきちんと作成する際のポイントとして、(1)問題発見、(2)問題に関する情報分析、(3)最重要問題の抽出、(4)問題解決のための目標設定、(5)目標達成のための戦略策定、(6)戦略の具体的行動への落とし込みといったことがある。

そして、業務チェックリスト作成を通して、1人ひとりの社員がこの6つの視点から仕事を考え、行動するクセがつき、自らの能力へ昇華できるようになっていくと、事業再生の計画は驚くほどスムーズに進むようになる。