太陽電池事業を継続した理由

昭和シェル石油会長 香藤繁常氏

当社の子会社・ソーラーフロンティアが手がけてきた太陽電池事業に、ようやく黒字化の目途がついた。一時は200億円以上の深刻な赤字が続き、事業継続へのご心配もいただいたが、前期(2013年12月期)は通期での黒字を見込めそうだ。

エネルギーソリューション事業の柱として位置づけた太陽電池は、苦難の歴史だった。撤退の判断をしないで踏ん張ってこられたのは、私どものCIS型太陽電池がオンリーワンの技術であったこともさることながら、それを担った技術者たちの真剣さ、自信の深さに確信が持てたからである。

一方、主力の石油事業の国内需要は間違いなく減少している。この間、エネルギー供給構造高度化法への対応が功を奏し、生産設備の効率化が進んだ。しかし、これで抜本的な問題が解決したというわけではなく、業界全体に過剰供給体質は残っている。早期に是正していかなければならない。

元売り各社とも自主的に需給調整も行っており、安定供給は保たれているが、国内では過当競争が続いている。その原因は、何が本来の需給を反映した価格体系を決めるかというメカニズムが不明確だからにほかならない。これも業界として取り組む課題である。

こうした状況を含め、石油業界は大きな変革期に直面しているといっていい。刻々と変わる事業環境に目を向けても行動を起こさず、あるいは組織のしがらみに縛られ、スピードで後れを取ったのでは、国際競争に敗れ去るしかない。

そこで私は、今年の社員への年頭挨拶で「勇気を持つ変革者たれ」と呼びかけた。市場動向を見ながら、どこに重きを置くかを的確に判断し、場合によっては事業領域の一部をばっさり切るといった決断を迷いなく下す。そして、将来に向けての成長戦略に対して勇気を持って遂行していく必要がある。当然のことながら、社内外の強い抵抗を受けるケースがある。しかし、これを遂行できる企業は繁栄し、できない企業は凋落していくしかない。