なぜ「将来が不安」で運用は危険か

「将来が不安なので、運用したいです」

という人は少なくないかもしれません。実際、家計の相談現場でもよく聞かれる声です。しかしながら、私はこの考えはお勧めしません。気になるのは、「なので」の部分。

将来が不安 →(なので)運用

という構図に違和感がぬぐえません。理由はおもに2つあります。

1つめの理由を説明するのに、簡単なシミュレーションをしてみたいと思います。

月1万円を30年間、積立運用を行ったとしましょう。年2%で複利運用できたとすると、30年後の元利合計は約494万円になります。年3%であれば約584万円。投資元本は360万円ですから、それぞれ134万円、224万円も殖える計算です。

これだけ殖えるとなれば、悪くありません。「運用はすべき」と考える人が多いのもうなずけます。

しかし、こうも計算できます。

それぞれのリターンを投資期間の360月で割ってみます。要はひと月あたりの平均リターンを求めるわけです。

134万円÷360≒3,730円
224万円÷360≒6,230円

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「30年間」毎月続けたら、節約と利回りは同じだった!

これで何がいえるかというと、1万円とは別に月3,730円ずつ毎月貯めることができれば、30年後には年2%で複利運用した場合とほぼ同じ額になる、ということです。月6,230円ずつであれば3%複利と同等です。

値動きは一切ありませんから、安心、確実。ハラハラドキドキもありません。低いとはいえ多少なりとも利息が付くと思えば、多少こちらに分があるでしょうか。

月1万円でリスクを取れるような方であれば、それ以外に3,730円や6,230円を捻出するのは難しくないでしょう。現実問題、無理のない数字だと思います。

つまり、運用をする前に、まずは家計を引き締めましょう、ということです。これが、“なので運用”に疑問を感じるひとつめの理由です。

平たくいうと、月3,730円や6,230円の「節約」は運用にも匹敵する、ということです。