ベースは嗅覚と直感、没頭である
あるいは従前のセブン-イレブンは、若い男性をメーンの顧客としており、それに対応した弁当類などを提供していた。しかし、「今の時代のコンビニは女性や高齢の顧客にとっての『近くて便利』を提供していくべきではないか」と考え、ミールソリューション型の商品群を本格的に投入したことで、セブン-イレブンの近年の売り上げ拡大が実現している。このストア・イノベーションは、若年男性の「近くて便利」にこたえる店づくりという、従前のコンビニの基本ルールを変更したことから生まれたものであり、このタイプのゴール変更を繰り返してきたことで、セブン-イレブンは、市場の飽和や成熟化を乗り越えて、いまだに成長を続けている。
リサーチにもとづいて活動を行うことが、そもそものリサーチの対象のあり方を再構築してしまう。このような循環する関係のなかでは、科学的なマーケティング・リサーチを行っても、その予測の有効性は限定的なものとなる。
一方で、市場が、ゲームのルールを書き換えながら行われるゲームの場であることは、企業に絶えざる成長機会をもたらす。この科学の知の枠組みを超える市場のもう一つの可能性をものにするには、どうすればよいのだろうか。水越氏とサラスバシ氏の指摘を踏まえれば、個人的な嗅覚と直感と没頭をベースにしながら、以下のような実践課題に取り組むことが重要となりそうだ。
・顧客の振る舞いをとらえ、これに迅速に適応しようとする一方で、自らの活動によって顧客の振る舞いが変わる可能性を見逃さない。
・ゴールを決めて、それをいかに実現するかを考える一方で、自らビジネスを顧み、ゴールを変更することでさらに大きな価値を生み出せないかを考える。
(平良 徹=図版作成 時事通信フォト=写真)