1億円以上は上場企業役員のわずか10%

(1)企業規模

たとえば、社員数10人の会社と1万人の会社では、経営者として責任の大きさが異なります。先ほどの平均報酬データでも、社員数300人未満企業の社長を1.0として、1000人以上の会社では1.8倍になっていました。

現在、上場企業では、1億円以上の役員報酬には公表が義務付けられています。昨年度で、400人以上の1億円プレーヤーが出ていますが、退職慰労金を除くと、この人数よりも減少します。多いと思うかもしれませんが、上場企業数3500社程度から見ると10%程度、上場企業の役員数約4万人からは1%。すなわち、日本では上場企業の役員になっても、100人に1人しか1億円プレーヤーにはなれません。「欧米の企業と比べると、日本の社長の給料は安い」というのは、あながち間違いではないのです。

その意味では、「企業規模は影響するものの、日本ではその傾向は緩やか」ということになるでしょう。

(2)世間相場

たいていの社長は、役員報酬を自分で決めることができます。社内では、おそらく最高額となりますので、参考にするのは、先ほど見たような平均相場の金額。あるいは、税理士や経営者仲間からの話を参考にしながら「ウチくらいの会社なら、◯千万円程度が妥当だろう」といった感じです。また、日本では少ないですが、経営者を外部からスカウトする場合には、ヘッドハンティング会社などの情報を頼りに報酬額を設定することになります。

アップルジャパンから、マクドナルド、今年からはベネッセへ経営者として移籍した、原田泳幸氏のようなケースも出てきました。外国人経営者が、役員報酬ランキングの上位に名を連ねるのも、ヘッドハンティング市場の相場がダイレクトに影響するからです。

(3)オーナーか否か

オーナー(大株主)か否かは、社員から見ればあまり関係ないように思えますが、経営者側から見れば極めて大きな要素です。サラリーマン社長であれば、会社が傾いても、減給や最悪クビになるだけです。しかし、オーナー経営者、特に創業者であれば、私財を投じて会社を起こし、銀行借り入れに個人保証を付けられ、多大なリスクを背負いこみます。現在の貢献というだけでなく、このリスクテイク料が加わると考えれば分かりやすいと思います。

ただし、上場企業か非上場企業かで、実際の報酬設定は異なります。本来、株主としてのリスクは、配当として受け取ればよいのですが、税制上、あらかじめ役員報酬として支給された方が、法人税を含めた節税になりやすく、非上場企業のオーナー経営者の多くはこちらを選択します。

一方、上場企業では不特定多数の株主に配当を払わないといけませんので、結果としてオーナー経営者にも相当額の配当金が支払われることになります。日本有数の資産家と言われるソフトバンクの孫社長やファーストリテイリングの柳井社長は、多額の配当金を受け取りますので、役員報酬自体はその実績に比較し明らかに少ない金額設定となっています。