税制に翻弄される消費者とビール業界
一方、全ジャンルの減税を求めているビール業界の税率格差縮小への受け止め方には、企業ごとに温度差もありそうだ。ビール系全体に占めるビールの比率がトップシェア「スーパードライ」を抱えるアサヒビールが約76%に対し、同社と激しいトップ争いを繰り広げてきたキリンビールは約45%で、税率見直しで明暗を分けかねない。消費者にとっては、外食でのビールが値下がり、家のみの第三のビールが値上げとなれば、そこは痛し痒しだ。
ビール系と酒税を巡っては、最近もサッポロビールが第三のビールとして発売した「極ZERO」が国税当局から疑義をかけられ、税率の高い発泡酒として今年7月に再発売するなど、税制に翻弄されてきた歴史がある。ビールに比べ麦芽の比率を抑え低価格を実現した発泡酒、第三のビールも、世界的に極めて高い水準のビールへの税率をにらんでの開発であり、さながらビール各社と国税当局とのイタチごっこの末に生まれた商品だった。
税率格差縮小については、政府・与党には長期的に税率を統一する意向があり、仮に将来的に税率が一本化されれば、ビール系に3ジャンルは不要になる。そもそも、この時期にビール系飲料の酒税見直しの議論が浮上した背景には、主力のビールが税率の低い第三のビールに市場を奪われ、その結果、税収の落ち込みを招いていることへの国税当局の危機感がある。2013年度の酒税収入は約1兆3700億円で、この20年間で約3割も減収した。ビール系はその66%を占め、税率格差縮小によって税収減の長期低落傾向に歯止めをかけたい当局の意図が透けてくる。
自民税調の野田会長は「本来、ビールを飲みたい人が(低税率で割安な)第三のビールを選ぶのは、あるべき姿から言うと、ちょっと違う」と語るのも、ある種もっともな意見だろう。しかし、税制見直しで振り回されるのは、ビール業界と消費者であるのは言うまでもない。