歌舞伎俳優 中村七之助さん

1983年、東京都生まれ。十八代目中村勘三郎の次男として生まれる。87年、二代目中村七之助を名乗り初舞台を踏む。歌舞伎以外にも、ハリウッド映画「ラストサムライ」、宮藤官九郎監督作品「真夜中の弥次さん喜多さん」などの映画やTVドラマ、現代劇にも活躍の場を広げる。「十一月新派特別公演」は11/1~25。


 

歌舞伎役者で「ナイルレストラン」のカレーが嫌いな人間は、まずいません。でも僕は子供の頃、父の勘三郎に連れられて初めて来たときに辛すぎて食べられなくて、それ以来避けていたんです。

なのに、15か16の頃かな、先輩の片岡亀蔵さんから「ナイルで昼飯食おう」と誘われ、しぶしぶついてきて……。負けず嫌いなので、どうせなら一番辛いものを頼んでやろうと思ってチャレンジしたのが、エビカレー。ところが、これが驚くほどうまかった! そこからハマってしまいました。似たようなカレーはたくさんあるけれど、他にはない“ナイル味”のカレーなんですよ。まだ31年の短い“カレー人生”ですが、この店を超えるカレーに出合ったことがありません。父もインド旅行から帰ってきたときに、「ナイルを超えるカレーはなかった」と言っていました。

京都の「鮨まつもと」とは、近くにある南座で兄・勘九郎の襲名披露公演をしたときからの縁です。2回目に行った日がたまたま僕の誕生日で、僕のほうから店主を「一緒に飲みませんか?」と誘いました。普段はそんなことめったに言わないんですけどね。それ以来、京都へ行ったときは彼の家に泊まるくらい親しくしています。僕は休日に劇場をはしごするような“芝居馬鹿”ですが、彼もかなりの“寿司馬鹿”。東京へ遊びに来たときに「何が食べたい?」と尋ねたら、「寿司」って答えたんです。「昼は何を食べたの?」と聞いても、「寿司」。四六時中、寿司のことしか考えてない馬鹿なんですけど(笑)、そのこだわりはかっこいいと思います。

9月2日から20日まで、「中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演 10周年記念」(※公演は終了)で兄と一緒に全国をまわります。東北や北海道など、普段はなかなか行けないところにも行くので、歌舞伎を多くの方に知っていただき、好きになっていただけたらうれしいです。

歌舞伎界も「新時代の到来」なんて言われていますが、僕が大切にしているのは、歌舞伎を好きでいること。そして、皆で同じ方向を向いて素敵な芝居をつくっていくこと。この公演も10周年を迎えましたが、ここまで続けてこられたのは、やっぱりお客様のおかげです。始めた頃は「若さを見てください」なんて言っていましたが、もうそんなに若くもないので(笑)、兄と僕のすべてを見てほしいですね。