金ピカの腕時計にネックレス……思わず、その風貌に動揺してしまった。しかし、笑うとホラ、写真の通りである。

「急募! お客さん 年齢・性別・学歴不問 短期/長期大歓迎!」

<strong>「飲食業未経験だったが、儲けは4年で1.5倍に」</strong><br>
望月通生●たこ焼き屋「多幸屋」オーナー。4年前に23年勤めた会社を退職し、開業。ホームページは、http://hp28.0zero.jp/521/tacoya/
「飲食業未経験だったが、儲けは4年で1.5倍に」
望月通生●たこ焼き屋「多幸屋」オーナー。4年前に23年勤めた会社を退職し、開業。ホームページは、http://hp28.0zero.jp/521/tacoya/

こんなお茶目な集客の貼り紙をつくった望月通生さん(47歳)の店はわずか2坪である。23年間勤めた東京ガスの関連会社が他社との統合により希望退職者を募った際、手をあげた。退職金を元手に開いたたこ焼き屋「多幸屋」はJR大井町駅から徒歩5分のところにある。

昼どき、隣接するゲーム施設帰りの“腰ばき”若者などが次々に5個入り280円のたこ焼きを注文していく。

「お待たせしてごめんなさいね。実は、今の季節と、秋が1番売れるんですよ。お昼から夕方は主婦や若い人、夜は会社帰りのサラリーマン。でもね、夏場は、みな鉄板の熱気を毛嫌いして店を遠ざけて歩く(笑)。冬は寒いから焼き上がるのを待ってくれない人もいてね……」

聞けば、夏の売り上げ(1カ月)は、損益分岐ラインとなる70万~80万円を切ってしまうが、書き入れ時の今頃は200万円を超えるという。

4年前のオープン当初は、「1個も売れなかったら収入はゼロになってしまう」と不安で眠れなかった。ようやく寝ても、うなされたり、立ち上がって寝ながらたこ焼きを焼く仕草をしていた、と妻に心配される日も1日や2日ではなかった。唯一の心の支えは、独立開業を最初から支持し、店を手伝ってくれた妻と子供である。

「正直、会社を辞めなかったら……と考えることはあります。でも、思いきって自分の店を始めてよかったと思う」

開業した年に比べ、賃料、光熱費、材料費など諸経費約6割を除いた儲けは50%増。3年後には近くへ移転し、店を大きくする計画も出ている……。

言わずと知れた、粉もの大国日本。麺類、パン、もんじゃ、ピザ、そして庶民の味の代表格、たこ焼き、お好み焼き。狭小空間でも、粉ものなら商売にできるのでは、と考える人が急増中である。