ぶっちゃけトークされると、相手もぶっちゃけたくなる

ある程度、相手との信頼関係が構築されたとみるや、キャッチは店で紹介する予定の商品やサービスのアピールをしてくる。しかし直接的に商品の宣伝をしたのでは、店舗での勧誘行為が見え見えになる。

そこで、アンケートなどで引き出した本人の悩みなどの事情をもとに話を展開する。自己啓発講座への勧誘ならば、「私は人間関係の悩みをもっていたけれど、この講座を受けたら解決できた」と言い、エステの勧誘ならば「以前は肌にちょっとトラブルを抱えていたけれど、ここの美顔器でのマッサージを受けたら、肌の状態がすこぶるよくなった」などという。自分の体験として話しながら、店の宣伝をするのだ。

そして、畳み掛けるように、「あなたも、もし気に入ったら、やってみたらいいですよ」という。もちろん、講座の料金やエステに幾らかかるかとかは話さない。まさか、契約をさせられると思わない相手は、軽い気持ちで「そうですね」と答える。こうして「よければ、やってみたい」という前向きな言葉を引き出すことで、連れ込み前の下準備は万全になる。

もちろん、一般のビジネスマンが路上キャッチのように、ウソの体験談を話したり、販売する商品の内容をしっかりと伝えずに連れ込んだりするような強引な勧誘をしてはいけないが、彼らのやり方をまっとうな仕事に生かせる部分はある。

それは、お互いに「小さな秘密」を共有しながらの信頼関係の築き方である。秘密といっても大げさなものではない。

たとえば、顧客や取引先との関係を深めたいとき。初対面なら、天気、ニュースなど他愛ない話で言葉のキャッチボールをして少し打ち解けたら、次第に出身地や好きなスポーツ(贔屓のチーム)など個人的な情報をやりとりする。ささやかな会話でいいのだ。

ただ、その際、大事なのは、前述した情報の取り出し方の上手な勧誘員が「自分の事情」を先に話したように、自分のプロフィールや経験(失敗談など)、住んでいるエリアなどプライベートな情報を積極的に自己開示するということだ。すると、話の内容にもよるが、自己開示された側はどことなく相手に親近感を感じるものだ。自分との類似点を発見すると親密度はさらに増していく。

そうやって、心が打ち解けあった土台の上で、商品の説明をする。その時には、信頼と商品の説明(営業)のバランスを考えることが大事だ。お互いがシーソーの両端に載っている状況を思い浮かべながら、うまくバランスを取る形で営業的な話を切り出す。

もし信頼が軽い状態なのに、営業色の強い話をすると、相手は押しつけがましい思いを抱くことになる。逆にいえば、信頼が重ければ重いほど、より突っ込んだ話ができるというものである。

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