大企業に入るほうがリスク

いまはソーシャルメディアという強力なネットワークができ、いいコンテンツがネット上で勝手に拡散されていく時代です。企業自らが自社の商品やサービスに関わる良質なコンテンツをつくる。これがコンテンツマーケティングの基本的な考え方です。しかもテレビCMや新聞・雑誌の広告の価格に対して、ブログやYouTubeは無料でも使えます。

例えば、シャンプーを売っている会社であれば、お客さんがシャンプーを欲しいのは髪をきれいにしたい、というニーズがあるからです。それなら髪に良い食べ物や睡眠のコラムや特集ページを企業内のウェブサイトに用意して、段階的にユーザーに興味を持ってもらう。その接点としてどんなコンテンツが有効であるかを僕らは提案するわけです。

企業が情報発信するときって、ついつい「買って買って」というスタイルになりがちですが、ソーシャルメディアの時代にはお客さんがどういう情報が欲しいかを考え、情報を出す必要性が高まっていくはずです。その視点がようやく企業の中に芽生え始めているコンテンツマーケティング元年のような時期に、イノーバという会社はできたんですね。で、僕はベンチャーに就職しようと活動する中で、宗像さんのブログを読んだことが就職につながった、ということです。

ただ、宗像さんと出会ってすぐに、この会社に来ようと思ったわけではありません。シアトルから戻った後、僕は大学3年生の秋に1カ月くらい就活をして、その後は8カ月間、ベンチャー向けの人材紹介会社の「スローガン」でインターンをしていました。ベンチャーで働きたいんだったら、まずは自分の気持ちが本当かどうか実際に働くことで試そうと思ったからでした。

1カ月しか就職活動をしなかったのは、自分の中に旧来の企業では合わないかも……という思いがあったからですね。どこかの大企業に総合職で入れたとしても、そこで営業をするのかマーケティングをやるのか、人事なのか総務なのかもわからないし、上司がどんな人かもわからない。僕はむしろ大企業という選択をすることこそ、勇気があるなとも思うくらいです。これから社会で働こうとしているのに、自分がどうなるのかがさっぱりわからないのは怖いなと。

それに今の就活のシステムって内定をもらってから、実際に働き始めるまでに1年くらい間がありますが、自分の人生を振り返るとこれは危険かなと。「1年後にこうなりたい!」と思っていても、その1年の経験で価値観が変わるかもしれない、と僕は自分の体験から思うんです。