ただし、勝手に保税地域を設置できるわけではなく、財務大臣の指定が必要で、税関所在地の近くにあることが多い。ちなみに東京モーターショーが開催されるお台場の東京ビッグサイトは「保税展示場」の許可を受けていて、外国商品を日本に持ってきて展示する際には、関税や消費税がかからないように配慮がなされている。

結局、問題となっている海外のサーバーを経由した電子書籍であるが、その保税地域から引き取られているわけではないし、外国貨物というモノでもない。したがって、消費税の課税対象にはならずに済んできたという理屈なのだ。

もっとも、いくら税制がそうなっていても納得いかないのが国内企業で、同じような問題は海外でも発生している。そこで欧州連合(EU)では2003年から、日本の消費税に当たる付加価値税を電子書籍のようなネット配信に対して課すようになった。

そして、日本の政府税制調査会もようやく重い腰をあげた。海外事業者に配信先の国への登録を義務付けて、売り上げなどの情報を得ているEUの制度を参考にしながら、課税する方向で検討していく方針を固めたという。もっとも、課税実施までには紆余曲折が予想され、当面は国内企業の不満をなだめる効果くらいしか期待できそうにない。

それに、いくら登録を義務付けて情報を得るといっても、海外まで税務調査にいくわけにはいかないだろう。つまり、どこまで正確に捕捉できるかという問題も残る。いっそのことネット上に“サイバー保税地域”を設けて、そこで世界中のネット配信を一括して把握できたらいいのだが……。

(構成=伊藤博之 図版作成=ライヴ・アート)
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