ネット社会への移行にともなって意外なところで問題になっているのが、海外からインターネットで配信された電子書籍や音楽などに対する消費税の課税の問題だ。
これまでネット取引大手の米国アマゾン・ドットコムは、電子書籍のデータを米国内のサーバーから配信していることで、日本の消費税の対象外とされてきた。しかし、同じ電子書籍を扱う国内企業の間からは強い不満の声が上がっている。
たとえば、500円の同じ内容の電子書籍であっても、国内企業は「500×0.08」の40円の消費税が課せられるのに対して、アマゾンは消費税がゼロ。当然、消費者からしてみると、買うならアマゾンのほうがお得ということになる。
ましてや、来年10月には10%への増税も予定されている。売っているものは同じなのに、消費税の課税対象かどうかで競争力に差がついてしまうのでは、国内企業が不満を募らせるのも無理はないだろう。
では、まずどうしてこうした格差が生まれてしまうのかを考えてみたい。
海外から自動車を持ってきて日本国内で売るのも、海外のサーバーを経由して電子書籍を売るのも、一般の人の目からすると、どちらも「輸入取引」であるように見えるのではないか。
しかし、税制上における輸入取引の観点は根本的に大きく違ってくる。少し難しい言い回しになってしまうが、税制上、消費税が課税される輸入取引は、「保税地域から引き取られる外国貨物」、つまり輸入品というあくまでも“モノ”が対象になっているのだ。
ここでいう保税地域とは、輸出入する貨物を法の規制下に置いて、きちんと関税や消費税の徴収を行えるようにした場所のこと。貨物船が海外から運搬してきた品物を港で一時保管しておくコンテナヤードなどといえば、イメージしやすいかもしれない。