4月からの消費税のアップが秒読み段階に入ったかと思ったら、今度は年収1000万円以上のサラリーマンを対象に、これまで経費として認めてきた「給与所得控除」を削るなどの所得税の増税の検討を政府・与党が始めたという。やれやれという感じだが、この給与所得控除で思い起こされるのが「サラリーマン税金訴訟」である。
私大の教授が、事業者には必要経費は認められるが、給与所得者にそれがないのは不公平であるなどの理由で訴えたもので、1985年に最高裁判所は原告の上告を棄却した。確かに、それ以前から“必要経費見合い”の給与所得控除の制度があり、それなりに考慮はされていた。しかし、これを契機にサラリーマンの不満を少しでも解消しようと、87年に導入されたものが「特定支出控除」だった。
この制度はサラリーマンであっても、1年間に使った「特定の支出」に関する金額が一定額を超えれば、その金額を「特定支出控除」として認めて所得税を安くしましょうというもの。実は、その特定支出の対象が2013年から拡大されるなど、サラリーマンにとって朗報がもたらされている。
対象範囲については図を見てほしい。弁護士、公認会計士などの資格取得費用、図書・衣服費、交際費なども認められるようになった。また、12年までは給与所得控除額を超えた分しか特定支出控除として認められていなかったものが、「給与所得控除額の半分」を超えた分へとハードルが下がっている。
たとえば、給与所得が「360万円超~660万円以下」の人の給与所得控除額は「給与収入×20%+54万円」で計算される。つまり、500万円の人の給与所得控除額は154万円で、その半分の77万円を超えた特定支出の分が、特定支出控除額として認められるわけだ。
でも、ここで一つ大きな疑問が浮かんではこないだろうか。
「そんなにいい制度があるのに、なぜこれまであまり話題になることもなく、ほとんどの人が知らなかったのか」と──。