【村上】自分でもよく働くと思います。とくに会社設立当初は休みなく働いていて、徹夜して会社に泊まり込むことも珍しくありませんでした。でも、それが特別なことだとは考えていません。子どもの頃にテレビで過労死する大人のニュースを見て、「社会人になれば過労死するくらい働く人もいる。それってすごいな」と、妙な感心の仕方をしました。それ以来、自分の中に「大人はハードワークがあたりまえ」という意識があるみたいです。

『入社10年目の羅針盤』
10年目前後の社員にありがちな仕事のマンネリや悩み。「社員のチアリーダー」と自称する岩瀬氏が仕事の楽しみ方を提唱する。

客観的に見ても、若い時期のハードワークは必要だと思います。仕事のチャンスは、デキる人のところに集まってきます。だからまず初速で頭一つ抜け出して、まわりが「こいつはやるな」と思ってくれる存在になることが大事。そういう存在になれたら、あとはどんどんいい流れがやってきます。もちろん流れに乗らずにマイペースでやっていく生き方もあるでしょう。でも、流れを自分のものにしたいなら、20代のうちにがむしゃらに働くことが重要です。

【岩瀬】がむしゃらに働くときは、会社のためでなく、自分のためにハードワークすることを心がけてほしいですね。自分のために頑張れば、それは自分に返ってきます。当然、やりがいも感じられるようになるはずです。しかし会社のためのハードワークは、企業から搾取されているだけという状況になりかねません。

別の言い方をすれば、短期の目標を達成するためでなく、「10年後のためにハードワークをしろ」ということです。たとえば営業のノルマがあるとしましょう。そのとき営業活動がお客さんと長期的な信頼関係を築くことにつながっているなら、がむしゃらにやればいい。しかし、そうでないなら「ノルマなんてクソくらえ」でもかまわない。同じハードワークでも、そうした意識を持っているかどうかで疲弊度はまったく違うでしょう。

リブセンス社長 村上太一
1986年、東京都出身。早稲田大学高等学院卒業。2009年早稲田大学政治経済学部卒。大学在学中の06年にリブセンスを設立。11年12月に東証マザーズに上場、12年10月には東証1部に上場し、ともに自社株式公開者の史上最年少を更新した。
ライフネット生命保険社長兼COO 岩瀬大輔
1976年、埼玉県出身。開成高校卒業。98年東京大学法学部卒業。在学中に司法試験合格。ボストン コンサルティンググループなどを経て、ハーバードビジネススクールに留学し、最優秀のベイカー・スカラーで卒業。2006年からネットライフ企画に参画し、13年6月より現職。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩、飯田安国=撮影)
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