――2012年はパナソニックやソニー、シャープなど大手家電メーカーの苦戦が浮き彫りになり、大規模なリストラが実施されました。先の見えない時代、ビジネスパーソンはどのような働き方を模索すべきでしょうか。
【リブセンス社長 村上太一】大手家電メーカーのリストラは、間違った安定志向へのしっぺ返しだと思います。僕たちより上の世代の人は、大手企業に入社さえすれば一生安泰だと信じていたかもしれません。しかし、このリストラで、本当の安定ではなかったことが見えてきた。13年以降は、安定の意味を問い直す時代になるはずです。
先が見えにくい不確実な時代ですから、将来の安定を求める心理は僕も同じです。ただ、何か大きなものに頼ることで安心するのは、安定の意味をはき違えているのではないでしょうか。僕が考える安定とは、組織に依存しないで自分の足で立つことです。自分自身が力を持っていれば、たとえば会社が揺らいでもまっすぐ立っていられるわけですから。
【ライフネット生命保険社長兼COO 岩瀬大輔】そのあたりの意識は、世代によって違うかもしれません。村上さんの世代には、最初は大手に勤めても、社会的な課題を解決したいとか、違う会社で自分を試したいと言ってどんどんと飛び出していく人が少なくない。一方、私の大学の同級生たちは、いまだに自分は安泰だと思いながらこつこつ働いています。私はいま30代半ばですが、それより上の40~50代になると、自分たちが危ないという意識はない。問題意識を持っていても、このまま逃げ切れると考えている人がほとんどです。
危機意識の低さは、日本の企業経営にも通じるところがあります。コリンズの『ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階』によると、衰退する企業は危機を察知すると一発逆転の策を打ち出して、さらに傷を深めるといいます。守らなければいけないときに一発逆転狙いは禁物ですが、日本企業はそれ以前に、一発逆転をしようという発想すらない。このままではまずいという程度の意識は持っているのですが、どう変わればいいのかわからず、時が過ぎるのを待っているだけ。いまのミドルも同じで、自ら変わっていこうという意識が薄いし、変わる方法もわかっていない。