【岩瀬】TFAに学生が殺到するのは別の側面もあります。アメリカは高学歴がインフレ化していて、他の人との差別化が難しい。そこでTFAのようなところで社会貢献活動をして、その経歴を引っ提げてゴールドマン・サックスやマッキンゼーにいくのです。
ただ、そうした学生たちが活動を続けていくうちに教育の問題点に気づき、2年間の期間が終わってもそのまま教育現場に残るケースも多いそうです。私はそれでいいと思う。最初の入り口がどうであれ、トラディショナルではない道に挑戦して何かを変えようとするのは素晴らしいことですから。
【村上】そうですね。でも一方で、社会起業を逃げ道にしてほしくないという思いもあります。僕は、企業は社会に価値を与えていくものでなければいけないという考えで経営しています。そこは営利・非営利関係なく大事なところ。だからこそ「儲からなくても仕方がない」と言われると違和感を抱いてしまう。
【岩瀬】日本の社会起業家の先駆けと称されるマザーハウスの山口絵理子さんも、「社会起業家という言葉は嫌い。あらゆる企業は社会的存在であり、社会貢献は利益を出さないことの理由にならない」と言っていました。才能とエネルギーのある人がいままでと違うことに挑戦して、そこから実際に成果を出す人がどんどん現れてくることを期待したいですよね。
自分のために頑張れば、それは自分に返ってくる
――ワークライフバランスについては、これからどう変わっていくでしょうか。
【岩瀬】毎週、釣りを楽しんで、釣果をフェイスブックにアップしている起業家の方がいますよね。もっと贅沢な遊びができるはずですが、そうではなく自分が好きなことに時間を使っていて、人生を楽しんでいることがひしひしと伝わってくる。ああいう働き方は、これからのモデルの一つになっていくと思います。
ただ、仕事以外の時間を大切にすることを、仕事で努力しないことの言い訳に使っている若い人も少なくない。それには異を唱えたいですね。入社1年目はビジネスパーソンとしての足腰を鍛えるために、目の前の仕事にがむしゃらに取り組むことが大切。これは働く目的が何であろうと変わりません。
村上さんがいい例でしょう。村上さんは学生のときに起業して、25歳で東証マザーズに最年少上場を果たしました。大企業安定志向とは、対極にあるキャリアです。しかし働き方そのものはオールドファッションで、高度成長期のビジネスマン真っ青のモーレツな働き方をしています。働く価値観は従来と変わっても、成長のためにはがむしゃらに働くことが欠かせないという基本は同じですよね。