セールスレディの数が営業力を左右すると言われる生保業界において、ネット販売で営業職員ゼロという革命を起こしたライフネット生命。同社を出口治明社長と二人三脚で創業したのが、副社長を務める岩瀬大輔氏だ。岩瀬氏は、ハーバード・ビジネススクールを上位5%の成績で卒業。日本きってのエリートが、旧態依然の業界で起業した理由とは。

【田原】大学を卒業して最初はどこに入ったんですか。

ライフネット生命次期社長 岩瀬大輔氏

【岩瀬】卒業後はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で2年間働きました。堀紘一さんが独立してドリームインキュベータをつくるときに誘われもしましたが、そのころアメリカのあるインキュベーターが日本に進出すると聞いて、日本法人の立ち上げに加わりました。

【田原】社会人として順調なスタートですね。

【岩瀬】そうでもないです。日本法人立ち上げをやっている間にITバブルがはじけて、アメリカ本社の株価が1年で1兆円から100億円になりました。その影響で、日本からの撤退が決定。仕方がないから半年間、ふらふらしていました。そうこうしているうちにリップルウッドから声がかかって転職。会社の買収などをやった後、28歳でハーバードのビジネススクールに留学して、帰国後にいまの会社を立ち上げました。

【田原】どうして新しい会社を立ち上げたの? 岩瀬さんなら、いいところに転職できたでしょう。

【岩瀬】留学中にブログを書いていたら、それを読んでいた投資家から「きみ、おもしろいからベンチャーをやらないか」と声をかけられまして。その人は私のBCG時代の先輩にも投資をしてそれがうまくいっていた。また同じようにBCG出身の若者をつかまえたら、うまくいくんじゃないかと思って声をかけたそうです。

【田原】それだけじゃ普通はお金を出しませんよね。その人は、岩瀬さんのどこに目をつけたのだろう。

【岩瀬】当時は堀江貴文さんが逮捕される少し前で、村上ファンドの村上世彰さんが世間から叩かれていました。でも、僕は日本には投資家が足りないし、誰もリスクを取っていないことが問題だと思っていて、村上ファンドを擁護する記事をブログに書きました。それを読んで、「バランス感覚がいい」と評価してくれたようです。