楽天参入で新たな価格競争に!?

【田原】いまはもう軌道に乗った?

【岩瀬】契約件数は17万件を超えました。ただ生命保険の場合は、システムなどの初期投資が大きいため、まだ黒字化していません。生命保険は法律上、10年以内に黒字化する必要がありますが、さらにペースを速めて前倒ししたいと考えています。

【田原】岩瀬さんにとって、このビジネスのおもしろさは何ですか。

【岩瀬】業界の常識を変えていくところでしょうか。僕らがやり始めたころ、生命保険をネットで買う人なんて誰もいないと言われていました。でも、いまや世界中の保険会社が僕らのところに話を聞きにやってきます。世界の生保業界で誰もやっていなかったことをやるのは、やはりおもしろい。

【田原】ごめんなさい、ネット販売って、岩瀬さんたちがはじめてなの? ITを活用した新しいサービスはアメリカで生まれるものだという先入観があったから、てっきり向こうのサービスをまねたのだと思っていました。

【岩瀬】アメリカは保険会社が多く、複数の保険会社と契約する乗合代理店もたくさんあるので、競争が進んで値段が下がっていました。だからネット販売のニーズがなかったようです。

【田原】なるほど、日本では岩瀬さんたちが出てきてようやく価格競争が始まったわけですね。ところで、この春から楽天も生保に参入しました。こんどはネット生保同士の価格競争も始まります。これについてはどう?

【岩瀬】競争が始まったのは、僕らにとってもいいことです。ネット生保のシェアは、まだ1%もありません。いろいろな会社が新しく参入することで、残り99%の人が検討してくれる期待のほうが大きい。

【田原】そうはいっても楽天は大企業で、いろんなものをやっています。岩瀬さんのところにはない強みがあるという点で、怖さは感じませんか。

【岩瀬】生命保険は一生に1回か2回しか買わない商品で、楽天さんが得意とする、ポイントをつけて日用品や嗜好品を売るというやり方がうまくいくかどうかはわからないと思っています。

【田原】普通のやり方が通用しないということは、岩瀬さんたちも売りづらいということですよね。どこで差別化します?

【岩瀬】ブランドが大事なのかなと考えています。若い世代の間で、僕らは誠実さと透明性を武器にして、古い業界に一石を投じる新しい世代を代表する会社だというイメージを持ってもらっています。そのイメージを強調していけたらいいなと。