著書の担当編集もマークされる

ウイグル人と私たちが講演会を開くと、決まって中国人が来て、会場を撮影する。撮影禁止と告げても構わず撮りつづけ、強く注意すると、ようやくやめる。

暴力沙汰にならないから、現行犯で捕まえることもできない。「派手に暴れてくれたら“別班”が動けるのに」と仲間内で冗談を言ったこともある。

市民向けの講演会に、軍人風の男が現れたこともある。講演が終わると、男は大きな声で挨拶にきた。

「こんにちは、教授。お元気ですか」

何しに来たのかと尋ねると、男は悪びれずに答えた。

「慰安婦問題と、あなたの問題を調べに来ました」

主催した市民団体に抗議すると、男は日本人の名前で参加申し込みしていたという。以来、私は会員制の講演会にしか出ないことにした。

中国は、著書のあとがきや謝辞にまで目を通す。私の本を担当した出版社の編集者までマークされたと聞いている。

教室も例外ではない。初回の授業だけ顔を出し、配布資料を持ち去って消える中国人留学生がいる。

留学生をつかった仲間割れ工作

もっと手が込んでいるのは、留学生を使って同僚と私を仲違いさせる“離間工作”だ。

あるとき私のゼミ生が、同僚教授のもとで学ぶ留学生から耳打ちされたそうだ。

「うちの先生が、あなたの先生についてひどい悪口を言ってたよ」

同じ話は、同僚教授のほうにも吹きこまれていた。ある日、トイレの列に並んでいると、教授に問われた。

「私の悪口を言ったんですか」

思い当たる節はない。誰から聞いたのかと尋ねると、教授のゼミにいる留学生の名前が挙がった。

小学生じみた話だが、どうにも気になって警察に相談した。調べてもらうと、留学生は大使館とつながっていた。

狙いは、教育の現場に分断と混乱を持ちこむことだろう。同僚教授とは親しい仲だったから、面と向かって尋ねてくれたのがよかった。笑い話ですんだのは幸運だったにすぎない。疑いを腹にため込んだまま、相手が黙っていたら――考えると、背筋が寒くなる。