辻元氏は、呆れたように「今回、危機管理能力の欠如が指摘されている。簗大臣の問題と同時に、首相の資質も問われている」と重ねて問いかけた。
その答弁は唖然とする内容だった。首相は「危機管理能力がなかったと思われたのは、とても残念だ。24時間、常に公用スマホをそばに置いて最大音量にして、夜も横になっている。国会の危機管理能力、災害などが発生した時の対処は迅速にやってきたし、危機管理には私は力を入れている思いだ」と、独自の見解を得意顔でアピールしたのだ。
辻元氏は「国交省も農水省も大混乱していた。それをちゃんと収められなかったというのは、災害の時に電話を置いていたとか、そんな話じゃない。そこが分からないというのが、理解できない」と首相を非難した。
辻元氏が指摘したのは、簗氏の更迭をずるずると先送りし、首相官邸や関係省庁、国会運営を混乱させたという組織的な危機管理対応力の欠如だった。首相は、精神論や技術的な初動対応に話をすり替えたのである。それがかえって首相の資質の問題を浮かび上がらせてしまったといえよう。
「撤回し、お詫びする。不適切だった」
政権の危機管理の要諦は、「事実把握と初動対応」「情報の一元的管理と丁寧な説明責任」「身内の処分を含む毅然としたガバナンス」とされる。今回の簗氏の事例では、どう対処すべきだったのか。
簗氏は、自民党筆頭副幹事長当時の5月24日、党栃木県大田原支部総会後の懇親会で、数十人の党員らを前に2026年度道路予算をめぐって、こう述べたことが音声データに残っている。
「那須烏山市と那珂川町の26年度の道路予算については、大幅にカットした。那須烏山市は前年度比で64%減、3分の1にした。那珂川町は54%減にしている」「自民党の議員に頼ってインフラ整備が必要だというところに多く回すのが、当たり前の話だから」
26年2月の衆院選で栃木3区は保守分裂選挙だった。簗氏は無所属新人の渡辺真太朗氏に敗れて比例復活当選した。那須烏山市の川俣純子市長と那珂川町の益子純恵町長らは、渡辺氏を支援していた。そして簗氏の発言に符合して道路予算が大幅に削減されていた。
こうしたカット発言報道の翌10月1日、簗農相は記者団に「大臣就任前の一議員の活動に関わる回答は控えたい」と述べたが、閣僚としての資質が問われている以上、逃げ切れるはずはない。
木原稔官房長官が翌2日、簗氏を官邸に呼び、「説明責任を果たすように」と指示せざるを得なかった。簗氏は同日夕、一議員として記者会見に臨み、国交省に交付金の額を問い合わせ、5月の会合で報告したことを認めたが、「私の表現ぶりが誤解を招いた」「行政に働きかけて予算が減ったという事実はない」と釈明した。
簗氏は10月5日、国会内で記者団に対し、5月の予算カット発言について「撤回し、お詫びする。極めて不適切だった」と陳謝しつつ、辞任を否定した。これに先立ち、高市首相が簗氏を首相官邸に呼び、発言を撤回し、謝罪するよう指示していた。
